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ルーカス・バリオス独占インタビュー vol.2『南米選手にあって、日本人選手にないもの』

先月11日に現役引退を表明した、元パラグアイ代表のルーカス・バリオス。

現役時代は8カ国17クラブでプレーし、ドルトムント時代には元日本代表の香川真司とも共にプレーしたサッカー界のレジェンドだ。類い稀なるポジショニングセンスと嗅覚に、抜群のシュートの精度を兼ね備えたプレーで相手に脅威を与えていた。

今回はそんなルーカス・バリオスに、メディアコネクト独占インタビューを行った。
長くトップレベルで活躍する秘訣や良いFWの条件、海外に順応する秘訣などについて語っていただいた。

今回は、全2回にわたるインタビューの最終話になります。

▼ルーカス・バリオスのプレー集▼

生年月日:1984年11月13日(37歳)
出身地:ブエノス・アイレス/アルゼンチン

経歴:2002-2004 アルヘンティノ・ジュニオルズ/2003-2004 ティグレ(ローン)/2004-2005 ティムコ/2005-2006 ティロ・フィデラル/2006-2007 コブレロア/2007 アトラス/2008-2009 コロコロ/2009-2012 ボルシア・ドルトムント/2012-2013広州恒大/ 2013-2015スパルタ・モスクワ/2014-2015 モンペリエ(ローン)/2015-2017 パルメイラス/2017 グレミオ/2018 アルヘンティノ・ジュニオルズ/2018 コロコロ/2019 ウラカン/2020-2021 ヒムナシアLP/2021 ディフェンサ・イ・フスティシア/2022 パトロナート

–Part1の記事『20年間のプロキャリアで学んだこと』にて、言語を学ぶ重要性についてコメントいただきました。バリオスさんは、さまざまな国でプレーをされましたよね。海外でプレーする上で、一番の困難は何でしたか?そして、その苦労をどのように乗り越えたのか教えてください

どこの国のリーグにも困難は存在します。その時に大切なのは「自分は何を辛いと感じているのか」を理解すること。その種類を自分で把握できていれば、対処法は自ずと見えてきます。

僕が感じた中で一番の壁は、言葉についてですね。自分でも練習の合間に現地の言葉を勉強するなどしました。通訳さんや言語の先生など多くの人にサポートしてもらい、プレーしたほぼ全ての国の言葉を習得できました。それが、困難を乗り超えることができた理由だと思います。

外国語を学べたことは、人生にも良い影響を与えていますね。言語を習得したことで現地のチームに馴染めましたし、その国の文化や作法にいたるまで、多くの理解を深めることができました。

–南米の選手が、共通の言語を持つスペインやポルトガル、言葉の構造が似ているイタリアでプレーすることは多いと思います。しかし、言葉の作りが全く異なるドイツでプレーするのは、少しハードルが上がりますよね。相当な苦労があったのではないですか?

そうですね。ドイツの初年度は、多くのことで思い通りに行きませんでした。通訳の方のサポート、週3回のドイツ語レッスンを受けていたのにです。

それだけ、文化や言語、思考の違いは大きかったです。言葉が全く分からない中でプレーをしていましたし、そこになおかつ結果も求められる環境でした。そんな環境にとてもストレスに感じたことを覚えています。いかに早く適応できるかを考え、懸命にドイツ語を勉強をしましたね。

チームメイトと協力し目的を達成するためには、良質なコミュニケーションが欠かせません。サッカーのルールはどこでも同じですし、ボールがあれば最低限のコミュニケーションを取ることはできます。ただ、試合に勝つことやチームメイトとの信頼関係を築くには、それ以上の密な交流が不可欠です。良いプレーをするためには、中級レベル以上の言語力を身につけたいですね。

–ドイツのサッカースタイルに適応するのが難しかった、という話しをしてくれるのかと思っていたので驚きました。やはり外国に渡ると、言葉の習得が大事なんですね。最近は日本人もヨーロッパで活躍し始めています。外国のリーグに順応するための秘訣があれば教えてください

順応する秘訣は「馴染もうとする姿勢」を周りの人に見せることです。環境に合わせようとする姿勢を見せることで、クラブやサポーターは自分を受け入れてくれるようになります。スタイルの違いやこれまでと異なる練習方法に適応するには、その心意気=姿勢が欠かせませんよ。

僕が言葉を習得することに重きを置いたのは、言葉を理解さえすれば、多くのことで悩まなくなるからです。監督の話しやピッチ上での会話が理解できるのとできないのでは、アウトプットの質が変わってきます。話しの内容がわからなければ余計に考えなくてはいけませんし、後手になってしまいます。サッカーには、ゆっくり考えている時間はありません。常に変化する状況に応じて、いち早く効果的なアクションを起こす必要があるのです。

–バリオスさんはドルトムント時代、我々日本代表のレジェンド「香川真司」選手と共にプレーされていました。一緒にプレーした元戦友として、彼の印象を教えてください

彼は能力もさることながら、素晴らしい人間性も持ち合わせていました。いつも明るく皆から好かれていましたね。彼と僕はとても仲が良かったんですよ。一日中、一緒にいた時もよくありました。練習前の軽食はいつも一緒に食べていましたし、オフの日には共に夕食を食べる仲でした。

今でもたまに、メッセージのやり取りをしていますよ。「最近調子はどうだ?」ってね。
今シーズンはベルギーでプレーしているようですね。彼の引退後、ドルトムントで再会できたら嬉しいです。

–そうだったんですね。バリオスさんが中国でプレーされている時にはJリーグのクラブとも対戦されましたし、パラグアイ代表として日本代表とも試合をしています。日本人選手に対して、どのような印象を持っていますか?

日本サッカーのレベルは年々向上していますし、良い選手も多く出てきていると感じます。その中でも日本人の特質している「技術の高さ」と「スピード」には驚かされましたね。シンジ(=香川真司)の技術の高さと一瞬のスピードは、当時ドルトムントの中でも1-2位を争うくらいでしたよ。

日本人選手が海外で活躍することで、海外サッカー市場ではどんどんと価値が上がります。

そうなると、日本のクラブにお金が流れます。クラブが潤うということは、若手の育成や海外選手の獲得など多くのチャレンジが可能となります。そのきっかけをシンジが作ったと思いますね。

–では逆にバリオスさんから見て、私たち日本人に足りないところは何だと思いますか?

「サッカーに対する愛」ではないでしょうか。

国の状況と時代によっても変わってきますが、僕がプレーした中国(同じアジアという観点で)では、まだまだ選手のスキルは発展途上でした。さらには、サッカー文化の定着・サッカーに対する愛を感じることは少なかったです。スキルアップすることはトレーニングを重ねれば可能ですが、文化や人の心を変えるのは、そう容易いことではありませんね。

世界レベルの試合では、サッカーに対する気持ちの差が勝敗を分けるといっても過言ではありません。

私たち南米人は、サッカーと共に生きています。子供が寝る時は、サッカーボールを抱いて寝るくらいですし、サッカーに人生を捧げる人も多いです。サッカーが人生の一部になっています。日常に欠かせないのです。

国によって考え方は違いますが「サッカーを愛する気持ち」を育むことにもフォーカスしてみてはいかがでしょうか。

–技術うんぬんの前に、まずは「サッカーに対する愛」が根本的に大切なんですね。南米の方から見た、日本サッカーに対する率直な感想は面白いです。最後に、 日本でプレーをする子供や若い選手たちにメッセージをお願いします

どんな時でも忘れてはいけないのは、サッカーを楽しむことです。

特に若年代では、楽しんでプレーすることが創造性を養います。子供の頃のサッカーは遊びですので、楽しんでやることを忘れてはいけません。
子供の頃友達と一緒にしたサッカーは一番幸せだったんじゃないですか?もしプロになったとしても、その気持ちは忘れてはいけません。

もう少し大きくなったら、知識や戦術を学ぶことも必要です。監督が求めるコンセプトや試合中の戦術についての知識は、大きくなれば必ず要求されますからね。プレーをしていく中で、チームの構成や戦術、自分の特徴をいかに発揮できるかを分析する必要があります。知識や理解度は、高いレベルでプレーするための必須スキルです。

楽しんでプレーしたい、その気持ちをピッチ上で解放してください。そして、常に新しいことを学ぶ姿勢を忘れないでください。楽しんでプレーをすることは、吸収力の違いにも大きく差が出ますし、なにせ過剰なストレスに見舞われないと思います。

常に、自分が今できることを考え、自分の能力を高めるために努力しましょう。
自分はどこに辿り着きたいのか、今後どうありたいのかをよく考え、行動に移してください。

応援しています。

End(お読みいただきありがとうございました。完 )

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