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車いすバスケットボール/鳥海連志・独占インタビューvol.1『障がいをネガティブと捉えるのか、それとも肯定するのか』

「多様性と調和」、「共生社会の実現」を訴えた、東京2020パラリンピック。実施された22競技539種目の中で、そうしたメッセージの枠を超え、純粋に見るスポーツとして視聴者を魅了した競技がいくつかある。筆頭格の1つが、車いすバスケットボールだろう。その男子日本代表選手の中で、ひときわ鮮烈な印象を与え、一躍注目の的となった選手がいる。切れ味鋭い異次元のプレーを披露する俊逸の22歳、鳥海連志(ちょうかい・れんし)だ。シュート、リバウンド、スティール、アシスト、全てのプレーに存在感を示し、チームを史上初の銀メダル獲得に導き、大会MVPにも選出された。

こちらは、全3回にわたるインタビューの1回目になります。

▼鳥海連志選手の東京2020パラリンピックスーパープレー▼

(東京2020パラリンピック 2日目 日本vsコロンビア)

ポジション:ガード
生年月日:1999年2月2日
出身地:長崎県
所属チーム:パラ神奈川SC
在籍:WOWOW

Instagram
https://www.instagram.com/iamrenshichokai/

3歳の時に両下肢を切断、両手指の欠損もあり、障がいクラスは2.5。中学1年の時に車いすバスケットボールと出会い、15歳で男子日本代表候補合宿に召集され、17歳でパラリンピック2016年リオ大会に出場。2021年東京大会では、大会MVPに選出される活躍で貢献、チームを大会史上初の準優勝に導いた。

▶▶車いすバスケットボールのルールを学ぼう!(サントリー『車椅子バスケットボールのルール for ビギナーズ』YouTube)


–全般的に、車いす競技の選手は、上半身が強いというイメージがあります。

一般の方よりは、明らかに筋量が多いと思います。加えて、代表に関わる選手は、基本的にフィジカルトレーニングを行っています。代表から与えられるメニューと、選手個々人が課題を持って取り組む内容、その両方です。

–リオ大会でフィジカルの課題を感じ、フィジカル強化に取り組んだそうですね。

取り組みとして、いろいろな部位の筋肥大と、体幹トレーニングを行いました。例えばベンチプレスですが、最初は20kgのバーを挙げられませんでしたが、今は最大で90kg挙げています。

体幹は、いろんなところで必須になってくるかなと思います。車いす操作を行う上で、単純に40分間車いすを操作し続ける筋力が必要です。それを、今回のパラでは、計8試合戦いました。いろんな所において、フィジカルはプレーから切り離せないものだったかなと思います。

–特に重視してきたのは、どの辺でしょう?

下半身のバランスと強化です。あとは、瞬発的テクニック。ベンチプレスでも、重さにこだわるのと同時に、スピードの強化を図り、60kgを一定以上の挙上スピードで複数回挙げるみたいなトレーニングを行いました。

–下半身のメニューについて、詳しく教えてください。

単純なスクワットを行ったり、チューブ使ったり、上から吊り下げた紐に足をかけて、腕立てみたいな状態を作って、胸の位置まで足を引きつけ、股関節あたりに働きかけたりとか、そういうメニューでした。

–そうしたフィジカル強化は、プレーの中でどう活きていましたか?

スクワットに関しては、単純に足を踏ん張るというところで、多分1番重要な部分です。

足を引き付けるトレーニングでは、後ろに下がりながらシュートを打つフェイドアウェイとか、ティルティングという片輪を上げるテクニックでのバランス、上に来たパスを体幹が伸びた状態でキャッチする時の働きかけなどをイメージしました。

上半身が伸びていても、体幹を保ったままプレーを行うというイメージです。フィジカルの差は、代表で海外の選手と対戦する時、全てのプレーにおいて出ると思います。

–海外の大きい選手に対しては、フィジカルで対抗していくというイメージになるのでしょうか?それとも、フィジカルの部分で逃げはしないけれども、違うところで対抗していくことになるのでしょうか?

単純に漕ぐ力などを鍛えることもありますが、まあそういうところで海外の選手に勝るということは、多分僕自身はないです。いかにそういう場面にしないかを考えて、車いす操作を行っています。同じステージには立たないようにしています。負けちゃいますので。

–「自分で限界を決めない」という信念をお持ちだそうですね。

僕の場合、2.5点という障がいクラスの選手の中で、体幹が効くというところは、優位に立てる部分です。

その一方、上肢障がい(左指3本、右指1本の欠損)があるという部分において、例えばボールハンドリングが不利なんじゃないかとか、そういうところもあります。そこは、練習でカバーできることがたくさんあるというのもそうですし、ボールハンドリングは手だけの動作じゃないよね、というところもあります。身体で補えるところとか、ドリブルする位置によって相手にカットされないというところが、車いすバスケットボールにはあります。

そういう自分の障がいをネガティブに捉えるのか、それとも肯定して自分なりの対策を立てていくのか。いろんなところで限界というよりも、その条件で出せるカードはこれとこれとこれだよねっていう選択肢を持っていくというのが、僕の考えの中の1つですね。

–手の動作ですと、パラリンピックでは、バウンドを手前に戻して相手選手をかわし、シュートを打つ技術も披露していました。

ボールを持っている状態でブレーキをかける時、通常は両手でタイヤを握りますが、ボール持っていると、それができません。

そういう時に、「バウンドストップ」という技術を使います。相手の選手の身長が僕より低い時、高いバウンドのバウンドストップを使えば、自分の方が優位に動けます。
※「バウンドストップ」は冒頭の動画もしくは下記リンク先から確認できます。(東京2020パラリンピック 2日目 日本vsコロンビア)

–競技開始から、直ぐにできたのでしょうか?それとも、努力を重ねてできるようになったのでしょうか?

ワンバウンドの中で、自分がそれまで出しているスピードを全て殺すブレーキングをしないといけませんので、直ぐにはできないですね。早ければ、3年ぐらい練習すれば身につくと思います。

–競技開始から短期間で日本代表選手になりました。それでも年月をかけて習得する技術がある。何かを継続するには、メンタルの強さも必要だと思います。

好きなものに対する忍耐力は、多分強かったんだと思います。

–身体能力という言葉が、世の中でよく使われますが、かなり定義は曖昧です。鳥海選手が捉える身体能力とは、どういったイメージ、定義になりますでしょうか?

自分の身体を思い通りに動かせる能力だと思います。

To Be Continued…(vol.2は2022/1/2(日)投稿予定)

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